2012-02-09

見誤ると怖いね。

Camera:Canon EOS 7D | Lens:EF-S 15-85mm | ISO Speed:100 | F-Num:4.5 | Shutter speed:1/160sec


写真の通り、吹雪の山頂。この強行軍が良くなかった。
…今回は登山としては失敗でした。
反省の意味も込めて、ある程度山行を残しておきます。

~~~
2日目は朝方から薄暗い曇天で、粉雪がちらちらと降ったり止んだり。
山頂まで行くかどうか検討しながら、予定より一時間遅れのスタート。
僕たちのパーティより先に単独で上がっていった人のトレースが
残っている為それを追って歩く。
ここ数日あまり人が入っていないのか、それとも雪がしっかり降ったのか
トレースの数はその1本だけ、踏みしめられたような跡は無い。
とは言え、樹林帯の中は鉱泉での荒天を忘れさせるような穏やかさだった。
霧氷になっていく樹木を横目に、時たま明るくなったり暗くなったりを
繰り返す空。風は感じず穏やかさすら感じる。
そこでちょっと油断していたのかも知れない。

赤岩の頭には8時ちょっと前だっただろうか。ちょうど森林限界を
越えたあたりで、先の単独者に追いつく。
話を聞いてみると途中からはラッセルだったらしい。僕らが彼を目にしたもの
腰まで埋まっている中を歩いている所だった。
硫黄・赤岳の縦走を予定していたようだが、稜線の視界は100m先がやっと。
この時彼が「硫黄までも厳しいかな…」と呟いていたのが耳に残った。
僕と同行者はここでミスをしてしまう。行くか行かないかの判断を後回しにしたのだ。
日本人にありがちな「空気を読む」という奴だろうか…なんとなく足を進めてしまった。
単独の彼を追い越して、二人で進む。

樹林帯の中では想像も付かないほどの強風が吹きつける。当然トレースは無し。
7つのケルンはもちろん、硫黄岳山頂は「あれかな?」とおぼろげに見える位。
先頭を同行に任せ、その後をひたすら歩く。
同行者はサブザックに切り替えたためか足取りが軽い。それに比べ僕は
ザックの替えが無いため、不必要な三脚や替えレンズなど以外は
全て背負っていたので足取りが重い。
この時その差が僕の注意力まで奪っていた。現在地点が本来のルートと
合っているのかどうかの確認を同行者に全て押し付けていたと思う。
予想していたより、やたら西のほうに巻くような形で登っていく。
そんな印象を持ちながら、ようやく山頂手前の旧ロボット雨量計測所横に
上がってきた。

山頂では突風と予想以上の寒さだった。まつ毛が凍り、視界が開けず
赤岩の頭では100mほど先は見えていたのに、この時には10m先も
見えなくなってきていた。
(ちなみに後で振り返ると気温がー18℃、風速は15~20m程だった。
体感温度にして、-33℃~-38℃というところか。)
二人の言葉に焦りが見え始める。「早く降りよう」
山頂で写真を撮った後、すぐさま下山を始める。
この時にふと雨量計測所の向こう側の標識が見えて読んでみると
僕らが上がってきた方向とは別方向に対して案内が出ている。
とはいえ、あがってきたほうから降りるのが確実だろうな~と
話し合い、下山開始。

下山はロボット雨量計測所のちょっと横にトレースが残っていた。
それを降りはじめる。最初の2分くらいでトレースが無い事に気づく。
だが、登ってきた時の注意力が欠けていた僕には先頭の同行者に
頼っていた部分があり、「道分かってるんだろうな~」位の軽い気持ちで居た。
だけれどおおよそ10分も歩けば急峻な箇所が終わるであろうルートなのに
いつになっても斜面は急。それどころか四つんばいになって降りるような
通った事が無いと疑いが強くなるポイントを数ポイント見つけ、だんだんと
不安になる。二人に会話はほとんど無し。

20分も下った頃だろうか。視界は一番強い時には5m先も確認できない。
足取りに差を感じていた僕はここでようやく声をかける。
「あんまり離れると見えないから、ちょっと待ってください!」
とは言え頭の中で渦巻いている不安は大きくなる一方だ。
とりあえず先行している同行者にトレース通りに降りているか確認を取る
そうすると返事は「分からない!」との事だった…
不安は一気に押し寄せ、僕は「どうしますか!?山頂へ引き返しましょうか?」と
投げかけるも、同行者には「時間が掛かってしまうから降りてしまおう」と言われた。
ずっと先行してもらっている部分で負い目も感じていたせいか、その判断に従おうと思った。

更に10分。完全にルートを見失い、先行者にはかなりの焦りの色が見えた。
僕の制止の声が回数を増やす。明らかにペースが速い。
そして誤認が始まる。「あれ、標識じゃない!?」と見ると僕にはそう見えない。
ここで僕は僕たちパーティは道迷いしている事を確信。そして先行している
同行者は僕が想像しているより焦りを感じ、パニックになっている事も…。
「ちょっと待ってください!!一度止まって!!」と強い制止をかける。
ようやく会話できる距離まで縮まったので、状況を確認。
やはり同行者もルート消失は気づいていた。それで早く降りなきゃという
焦りも感じていたらしい。
これで二人とも焦れば、本当に遭難してしまう…そこで却下された山頂への
引き返しを再提案する。だが同行者は「時間がかかりすぎるんじゃないか?」と再度問う。
しかし、山頂についたのは8時半。現在時刻を確認すると9時10分だった。
「例え引き返したロスを多く見ても山頂までは1時間もかからない。それより
この吹雪で僕らが着けてきた山頂までのトレースを失うと本当に戻り方すら分からなくなる。
山頂に戻れば、ルートを再考する上でも楽だし、間違ったところに降りれば引き返せなくなる。」
僕は極力冷静になろうと冷静な演技をした。諭すような出来るだけ穏やかな口調で。
同行者も納得してくれたので、来た道を引き返す。
実際誰も踏んでいない深雪で場所によっては腰付近まで埋まるような下りだったので
かなりの体力を消耗していた。これ以上下っていたらトレースは消えて、体力も無くなり
山頂に戻れなかったのではないかと振り返る。

30~40程かかってようやく山頂へ引き返す。
吹雪いているこの環境から離れるべく、ロボット雨量計測所を調べると
雪に埋まった地面には風を逃れる高さ60cm程の小さなスペースがある。
中に入ると風が完全に避けられ、少しだが外気と比べると暖かさも感じた。
実はこの時点で僕は凄く安堵していた。足取りを重くしていたザックの中には
夜間撮影用のダウンジャケットもあるし、ツェルトやシュラフもある。
更には食料もこまめに食べれば3日くらいは持つだろうという量は持っていた。
もし吹雪が酷くなって下山できなくても、どうにかなるな~と。
同行者も暖かい飲み物を口にしたら、少し落ち着いたようだ。
ルートを再確認するため、登ってきた方角と正規ルートの違いを見つけ
本来どこから降りるべきかを検討する。

しばらく右往左往しながらも、ようやくトレースを見つける。
(この最中実はあとで恐怖したのだが、爆裂火口側に一度迷い込みそうになった…)
慎重に見失わないように、先行してもらって困った時の判断は僕がするという
スタンスを取る。体力的に消耗していたので先行できる自信が無かった。
歩き始めて10分後、昨夜お湯を作るために鉱泉の小屋に入った時に話をした
登山者が上がってきた!…助かった~と安堵の声を上げてしまった(笑)

…とまぁ無事降りてきてこんなブログ書いているのですが
慣れた人から見ると「なにそれ」となるかもしれない。
けれども、初心者にありがちなミスだと思うのでポイントを纏めておこうと思う。

・天候に対する安全マージンは大きく取る
冬は一度崩れたらそうそう簡単には天候が回復しない。
(ましてや今回は大寒波が襲うと予報すらあったのだから…)


・様子見で登る時は分岐毎とか定時とかルールを決めて
二人で決断が必要。

二人で登っているからといってどちらかが決めてくれるだろうと
言う考えを捨てるべき。危険を伴っているのにそれはあまりにも無責任だ。
しっかりと自分の意見を伝えるべき。

・道迷いしたと思ったら躊躇せず、引き返す
これも当たり前の事だけれど、いざその状況になると引き返したくなくなる
(理由は体力を消耗してしまうとか時間ロスを伴うとか)
生きて帰る事が優先なのだから引き返すのが一番。沢に入ったら本当に不味い。

・冬山は基本的に夏道を覚えておいて損は無い
これはどの山にも言えることではないかもしれないけど、今回は
そもそも夏山で山頂の特徴を把握しておけば間違って登ってきた事に
気づいたはず。

他にも二人で反省会をした、今回の硫黄岳登山。
怖かったけれど、初心者のうちにこの体験をしておけば
変にプライドが高くなった頃に体験するより良い戒めになるかなーと
ポジティブに捕らえてます。

皆様もお気をつけて登ってくださいね!

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